yuiponz 読み物

無料でできる最強の趣味「生きもの観察」— 見つけて、記録して、ふり返る

春の小道で小鳥を撮る親子と、季節の生きものの写真が貼られた大きな観察アルバム、それを見る研究者の水彩画

生きもの観察は、道具もお金もいらず、家の窓や通勤路からすぐ始められる趣味です。見つけた生きものをスマホで記録すると、名前は世界中の人が教えてくれ、その記録は研究にも使われて、あなたがそこで生きものを見ていた証として残り続けます。

この記事では、生きもの観察の魅力と、「記録する」「ふり返る」でもっと楽しくなる方法、最初に会いたい身近な 9 種、今日からできる 3 ステップを紹介します。

夜の板の上を歩くニホンヤモリ、オレンジ色の腹のジョウビタキ、石のそばのオカダンゴムシ

どれも家のまわりで会えます(写真: yuiponz)

なぜ「最強の趣味」なの?

理由は 5 つあります。

5 枚のカード: 財布に×印と小鳥、生きものが隠れた住宅地の小道、窓のヤモリとチョウと小鳥の四季、スマホの小鳥の写真を囲んで話す人たち、地球につながる写真の引き出し

1. お金がかからない

必要なのは、目と、いつも持っているスマホだけです。双眼鏡も図鑑も、欲しくなってからで間に合います。あとで紹介する iNaturalist も SpeciesStats も無料で使えます(スマホと通信の費用はかかります)。

2. いつもの散歩が宝探しになる

同じ道でも、「何かいないかな」と思って歩くと景色が変わります。電線の上、塀の隙間、街灯の下、植え込みの葉の裏。毎日通る道に、何十種類もの生きものが暮らしています。

住宅地の小道。電線の小鳥、塀の隙間のヤモリ、植木鉢のそばのダンゴムシ、葉の上のチョウ、道のハクセキレイ、石の上のトカゲが隠れている

この絵の中に、生きものが 7 匹います。見つけられますか?

3. 季節がわかるようになる

秋になると「ヒッ、ヒッ」という声の鳥が庭先に来る。春の夜、窓に小さなヤモリがはりつく。花壇にオレンジ色のチョウが増える。生きものを見ていると、カレンダーより先に季節の変わり目に気づけます。

四季の輪。春は夜の窓のヤモリ、夏はパンジーの花壇のツマグロヒョウモン、秋は電線のジョウビタキ、冬はツバキの花のメジロと落ち葉のダンゴムシ

4. 名前は、誰かが教えてくれる

「この虫、なんだろう」で終わらなくていいのが今の観察です。写真を iNaturalist に上げると、画像から名前の候補が出て、さらに世界中の利用者が「これは〇〇だと思う」と名前を付けてくれます。名前がわかると、次に会ったときの見え方が変わります。

スマホに写ったジョウビタキの写真を、地球のあちこちの人たちが囲んで、名前の候補や虫めがね、チェックの吹き出しを出している

5. 自分の記録が、残って、使われる

写真を撮って終わりではなく、「いつ、どこで、何に会ったか」が記録として残ります。条件を満たした記録は、GBIF(地球規模生物多様性情報機構)という国際的なデータベースに共有され、世界中の研究者が使っています。

散歩の途中で見つけた窓のヤモリが、何年か先の論文の 1 点になる。自分がその季節、その町にいて、生きものを見ていたことが、データとして残り続ける。日記とも写真とも違う、生きた証が残る趣味です。刺さる人には、これがいちばんの理由になります。

夜、窓のヤモリを撮る人。その 1 枚の写真が光の線で、本を読む人、地球儀を囲む 2 人、公園の掲示板を見る子どもたち、書庫の本へと届いていく

窓で撮った 1 枚が、いろいろな場所へ届きます

記録すると、何が楽しくなるの? — iNaturalist

iNaturalist(アイナチュラリスト)は、見つけた生きものの写真に場所と日時を付けて記録する、無料のサービスです。スマホのアプリと Web の両方で使えます。

iNaturalist のアプリ(無料)

iNaturalist のロゴ

App Store からダウンロード Google Play で手に入れよう

iPhone では、新しいアプリ「iNaturalist」を入れてください。前からある「iNat Classic」は、いずれ App Store から外れる予定です。

記録を始めると、こんなことが起きます。

  • 名前の候補が出る: 写真を上げると、画像から名前の候補が出ます。候補は手がかりで、正解とは限りません。合っているかは、写真を見比べて自分でも確かめます。
  • みんなが名前を確かめてくれる: ほかの利用者が名前を付けてくれます。これを「同定」と呼びます。何人かの意見がそろうと、記録に「研究グレード」(画面では「研究用」と出ることがあります)の印が付きます。
  • 自分の記録が一覧になる: いつ、どこで、何に会ったかが、地図と一覧でたまっていきます。1 年たつと、自分だけの「身の回りの図鑑」になっています。

iNaturalist のアプリの自分のページ。2,595 件の観察、612 種と、自分で撮った観察の一覧。場所はぼかしてある

記録を続けると、自分の写真の記録がこれだけたまっていきます(画面は iNaturalist、2026 年 10 月。場所はぼかしています)

iNaturalist のアプリの『データ品質』の欄。カジュアル・要同定・研究用のうち、『研究用』に緑の印が付いている

名前がそろうと『研究用』(研究グレード)の印が付きます(画面は iNaturalist、2026 年 10 月)

くわしい説明と、始める前に知っておきたい 3 つの設定(位置の公開・写真のライセンス・年齢)は、別の記事にまとめています。

→ iNaturalist とは? 生きものを記録して名前を調べるアプリ

ふり返る・くらべると、もっと楽しい — SpeciesStats

記録がたまってくると、「今年はどんな生きものに会ったっけ」「この地域では今、何が記録されているんだろう」と知りたくなります。そんなときに使えるのが SpeciesStats(スピーシーズスタッツ)。iNaturalist に投稿された観察記録を集計して見せる、無料サービスです。

iNaturalist のアカウントで SpeciesStats にログインすると、記録するほど、あなたが撮った写真で「わたしの図鑑」ができあがっていきます。「関東図鑑 94/151」のように、地域ごとの 151 種を埋めていく楽しみも。お気に入りの 4 種・9 種を選んで、「わたしの推し」の 1 枚にして SNS で見せることもできます。iNaturalist でたまった記録が、SpeciesStats で図鑑になる、という流れです(対象は日本での観察です)。

左: 485 種に出会ったわたしの図鑑と、東京都図鑑・神奈川県図鑑の進み具合。右: 関東図鑑 94/151 種と、50 種の節目のお知らせ

記録するほど、自分の写真でできた図鑑が厚くなっていきます(画面は SpeciesStats、写真: yuiponz)

ログインしなくても、日本全国や都道府県、関東などの地方を選ぶと、その地域でこれまでにどれだけの生きものが記録されてきたか、年ごとの移り変わり、植物・昆虫・鳥などの内訳を見られます。

関東地方の全期間の観察記録の数・記録された種・観察者・同定待ちの数、年度ごとのくらべのグラフと表、活動状況の推移、年ごとの観察数、分類群の内訳の円グラフ

関東地方では、これまでに 1 万 6 千種あまりが記録されています(画面は SpeciesStats、2026 年 10 月)

画面に出る数字は「観察記録の数」と「記録された種の数」で、生きものの数ではありません。記録する人が多い場所・季節ほど数字は大きくなります。それでも、自分の地域でどんな仲間がよく記録されているかを眺めるだけで、次の散歩で探すものが決まります。

→ 記録を数えて、くらべて、見る: SpeciesStats の紹介 → SpeciesStats の紹介ページ

SpeciesStats は、このサイト(yuiponz)の運営者が個人で開発・運営している無料サービスです。iNaturalist の公開データを使っています。iNaturalist の公式サービスではありません。広告はありません。

あなたの記録は、どこまで届くの?

5 コマの流れ: 窓のヤモリをスマホで撮る、写真にほかの人の同定が付く、世界中の写真が集まる地球の棚に収まる、研究者が 1 枚を取り出して本と見くらべる、町の公園や建物に光が届く

1 撮る → 2 名前がそろう → 3 世界の記録に加わる → 4 研究に使われる → 5 町の調査にも

iNaturalist の記録のうち、「研究グレード」になり、記録のライセンスが CC0・CC BY・CC BY-NC のもの(何も設定しなければ CC BY-NC なので、ふつうは当てはまります)は、GBIF に共有されます。

GBIF は、世界中の博物館や調査、市民の記録を 1 つにまとめた国際的なデータベースで、そのデータを使った論文は 1 日に 6 本以上、2023 年には週に平均 34 本のペースで出ています(GBIF の集計、2026 年 10 月 23 日に確認)。絶滅のおそれのある生きものの評価(IUCN レッドリスト)や、各国の機関の報告書にも使われています。

日本でも、神奈川県海老名市が iNaturalist を使った市民参加の生きもの調査を行い、投稿された写真を調査報告書で紹介しています。あなたの記録が、住んでいる町の調査の一部になることもあるのです。

つまり、あなたが窓で見つけたヤモリの記録は、長く残り、世界中の研究で使われ続ける可能性があります。ノートに書くだけだった観察が、誰かの研究の材料になり、何年たっても「この日、この町に、このヤモリがいた」と引けるデータになる。自分の観察が、自分より長く残るかもしれない。これが、今の生きもの観察のいちばん新しい楽しさです。

まず会いたい、身近な 9 種

住宅地・公園・ベランダで会える生きものを、季節ごとに選びました。冬に読んでいる方は、上の 3 つから。

目のまわりが白いメジロ、白と黒のハクセキレイ、灰色で頬が茶色のヒヨドリ、オレンジ色のヒョウ柄のツマグロヒョウモン、しっぽが青く光るトカゲの子ども、大きな目のハエトリグモ

上から左へ、メジロ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、ツマグロヒョウモン、ヒガシニホントカゲの子ども、ネコハエトリ(写真: yuiponz)

生きもの 会える季節 どこで 見つけ方のコツ
ジョウビタキ(鳥) 秋〜春(10 月ごろから) 庭、公園、河原、電線やアンテナの上 「ヒッ、ヒッ」という澄んだ声。おじぎをして尾をふるわせる。オスはオレンジ色の腹、メスは地味だが翼に白い紋
メジロ(鳥) 通年(冬は庭や公園でも姿を見る機会が増える) 公園や庭先。サザンカ・ツバキなどの花 目のまわりが白い。花の蜜をなめに来る
ハクセキレイ(鳥) 通年 駐車場、道路、川べり 白と黒。地面を歩き、「チチン チチン」と鳴きながら波形に飛ぶ
ヒヨドリ(鳥) 通年(冬は庭木の実や花の蜜をよく食べに来る) 街なか、公園、庭木 「ピーヨ、ピーヨ」という大きな声で気づける。街でいちばんよく見かける野鳥のひとつ
ニホンヤモリ(爬虫類) 春〜秋の夜 家の窓、街灯のそば、塀 夜、明かりに集まる虫をねらって窓にはりつく。触らずに見るだけに
ヒガシニホントカゲ(爬虫類) 春〜秋(4〜10 月ごろ)の、晴れた日の午前 日当たりのよい石や石垣のすき間、日なたの開けた場所 体につやがある。子ども(幼体)はしっぽが鮮やかな青色
ツマグロヒョウモン(チョウ) 春〜秋(成虫は 4〜11 月ごろ) 花壇、公園。幼虫はパンジーやビオラの葉を食べる オレンジ色に黒い斑点。メスは前ばねの先が黒い
ネコハエトリ(クモ) 春〜夏(4〜8 月ごろ) 庭先や公園の、草や木の葉の上 網を張らずに葉の上を歩き回り、ぴょんと跳んで虫を捕る。前を向いた大きな 2 つの目が目印。野外でいちばんよく見かけるハエトリグモのなかま
オカダンゴムシ(その他) 冬にも見つかる(落ち葉や石の下で冬越し) 植木鉢の下、落ち葉、石の下 刺激を受けると丸くなる。いちばん身近で、いちばん記録しやすい

きっかけになる鳥、ジョウビタキ

冬の朝、窓の外の手すりにとまったジョウビタキのオスと、窓辺の湯気の立つマグカップ

『うちの庭のジョウビタキ』ができると、冬が楽しみになります

秋、庭や公園で「ヒッ、ヒッ」という澄んだ声が聞こえたら、電線やアンテナの上を探してみてください。冬鳥としては早く 10 月には姿を見せ、桜が咲くころには去っていきます。オスはオレンジ色の腹と銀白色の頭、メスは地味ですが、どちらも翼に白い紋があります。ときどきぴょこんとおじぎをして、尾をふるわせます。

ジョウビタキは冬の間、群れを作らず 1 羽ずつ縄張りを持つので、同じ場所で何度も同じ個体に会えます。「うちの庭のジョウビタキ」ができると、冬の散歩が楽しみになります。生きもの観察を始めるきっかけとして、いちばんおすすめしたい鳥です。

細い枝先にとまったジョウビタキのオス。オレンジ色の腹と銀灰色の頭

秋、「ヒッ、ヒッ」の声の主(写真: yuiponz)

縁起のいい「家守」、ヤモリ

ヤモリは漢字で「家守」や「守宮」と書きます。家の近くに住み、家に来る虫を食べてくれることから、昔から家を守る縁起のいい生きものとされてきました(言い伝えで、科学的に確かめられた効き目ではありません)。毒はなく、臆病で、人に害を加えません。

夜、街灯や家の明かりに集まる虫をねらって現れるので、窓にはりついているところを見つけられます。捕まえるとしっぽを切ることがあるので、触らずに、窓越しに見るだけにしましょう。

ヤモリが気になったら、毎朝 3 匹のヤモリの記録を届ける「やもり帖」もどうぞ。

→ やもり帖・ヤモリに出会うには

夜、家の外の板の上にいる灰色のニホンヤモリ。指の先が丸く広がっている

夜の家のまわりで会えたニホンヤモリ。見るだけにして、そっとしておきます(写真: yuiponz)

今日からの 3 ステップ

3 コマの絵。窓から電線の小鳥と窓のヤモリを見る、植え込みのチョウをスマホで撮る、夜に家のマークと鍵のついた画面で 1 件目を記録する

  1. 今日: 家の窓と、家の前の電線を 1 分だけ見る。夜なら窓にヤモリ、昼なら電線に鳥。
  2. 今週: 見つけた生きものをスマホで撮る。1 枚目は全体、2 枚目は近づいて。名前がわからなくても大丈夫です。
  3. 来週: iNaturalist のアプリを入れて、1 件目を上げる(アプリのリンクは上の「記録すると、何が楽しくなるの?」の節に)。上げる前に、位置の設定(家の場所を出さない)だけ確かめておきましょう(「iNaturalist とは?」の「始める前に知っておきたい 3 つのこと」で紹介しています)。

観察のときの決まりは 3 つだけ。触る前に見る、捕まえたら戻す、家の場所と顔は出さない。 見つけた場所は記録の大事な一部なので、ふだんはそのまま残してかまいません。気をつけたいのは、家やその近くで撮った記録から住まいが分かってしまうことと、人の顔が写り込むことの 2 つ。家のまわりの記録だけ、位置を「ぼかす」設定にしておけば安心です(希少な生きものは、iNaturalist が自動で位置をぼかします)。あとは私有地や公園の決まりを守るだけ。それで、長く続けられます。

3 つの丸いアイコン: 目とトカゲ(触る前に見る)、両手から草地に降りるトカゲ(捕まえたら戻す)、顔と地図のピンがぼかされた写真(家の場所と顔は出さない)

次に読む

イラストは生成 AI(ChatGPT)で作り、運営者が確認しています。

出典(2026 年 10 月 23〜28 日に確認)